新型コロナウイルスに対する基本的な考え方

新型コロナウイルス感染症は、治療法が確立しておらず、変異株を含め実態がまだ分かっていないというのが現状です。そうした中で、感染拡大を抑えるには、個人の手洗いうがい等による努力も必要ではありますが、基本的には検査をし、感染者を見つけ、早期に隔離等ほかの人へ感染させないような措置をとることが不可欠です。

たしかに、検査を徹底すれば、一時的には医療等へ大きな負担がかかるかもしれません。しかし、検査を抑制するということは、感染者を特定できないことから、さらに感染が拡大する結果につながります。その際の医療等への負担は桁違いに大きく、収拾がつかなくなりかねません。新型コロナウイルス感染症は大きな問題ではないとして検査を全くしない(≒医療機関にも原則かからない)のなら別ですが、そうでない限り、「医療への負担を減らすため」にも、検査は必要です。

PCR検査の精度は高い

PCR検査を積極的にしない根拠にしているのが、PCR検査の精度です。埼玉県知事をはじめ、PCR検査の感度は70%と言っていますが、その数字自体根拠のないものでした。北海道大学病院による世界最大規模の新型コロナウイルスにおけるPCR検査の研究では、その精度の高さが明らかになりました。
※なお、「検査の精度が低いから」と極めて該当者の少ない「濃厚接触者」だけ検査をし、他を抑えるのは本来おかしなことです。というのも、精度が低く、信用できないのであれば、そもそもPCR検査は無駄であり、例えば濃厚接触であっても意味はないことになります。

北海道大学病院の研究によると、PCR検査の感度・特異度についてそれぞれ以下のような結果が得られています。
★感度(感染者が陽性となる確率):約90% 
★特異度(非感染者が陰性となる確率):99.9%以上

このことから、PCR検査の感度が70%であるというのは正しくなく、実際には90%程度であることになります。すなわち、偽陰性になるのは約10%、また特異度から偽陽性になるのは0.1%未満にとどまり、PCR検査の精度の高さがうかがえます。

そもそも、PCR検査の精度が低いから広くは検査をしない、というのは論理自体成り立ちえないものですが、その理由さえも誤っているのです。
加えて、PCR検査は、副作用などは存在せず、人体に影響を及ぼすものではありません。したがって、費用以外の面で、PCR検査を抑制する意味はありません。

感染性の有無は判断不能

「PCR検査で陽性となっても、感染性がないかもしれないから検査をする意味はない」、という主張がみられますが、これも大いに疑問です。たしかに、感染性がない場合でもPCR検査で陽性になることはあり得ますが、逆に、感染性がないと言い切ることはできません。
(無症状であっても、感染力があることは珍しくありません。様々な自粛も無症状感染者がいることを想定して促されているのです。)

特に、同一集団で、クラスターないしそれに類似する複数感染が見つかった場合においても、それぞれの感染日は異なっている可能性もあり、感染日を特定することはできません。加えて、新型コロナウイルスにおいて、感染性がなくなるまでの日数などは分かっておらず、仮に感染日が特定でき、かつ感染日から一定の期間がたっているからといって(PCR検査で陽性になる場合に)感染性がないとは到底いえません。

PCR検査で感染性の有無は判断できませんが、だからこそ、感染抑止の観点からは「よくない方のケース」を考えて、検査をし、陽性であれば感染力があるということを前提に対処するのが、感染拡大抑止策として妥当です。

マスク・換気をしていても感染することは十分にあり得る

「濃厚接触」か判断するにあたり、マスク着用の有無というのが一つの基準になっているようですが、マスクによる感染リスクを抑える効果はありますが、それですなわち感染しないというわけではありません。

マスクは、(N95マスク等の特殊なものを除き)不織布のものであっても、ウイルスを通さないものではありません。もちろん、大きな飛沫の吸い込みを防ぐことはでき、一定の効果はありますが、マスクをしていても会話したりすることで感染することは大いにあり得ます。

また、換気についても同様、空気の流れをよくすることで、感染リスクを抑えることはできますが、感染しないというわけではなく、よく換気されているところであっても感染することは珍しくありません。その他、手洗いうがいなどの徹底も、もちろん効果はありますが、自分の努力のみで完全に防げるものではありません。

感染対策は、各々なさっていると思いますが、それでもなお感染は防ぎきることは困難です。だからこそ、感染が確認された場合には、隔離等の措置がとられます。マスクをしていたから、換気していたから、といったものが濃厚接触の基準になり、それによって検査の有無が決せられるというのは、間違っています。
感染者と同じ空間にいたら、マスクをしていても、換気をしていても広く検査することが、結果的に感染抑止へつながると考えられます。

学校等における新型コロナ検査の必要性

学校等においても、新型コロナウイルス感染症の多数感染事例が市内外を問わず発生しています。
当然、感染者には何の責任もなく、誹謗中傷・差別等は決して許されません。

他方、学校等において感染者が確認された場合には、行政側には感染を抑えるための措置をとることが求められます。

複数の学校関係者に同時期に感染が確認された場合

ごく当然のことですが、複数学級あるいは、複数の学校関係者に同時期に感染が確認された場合には、以下の措置が求められます。

1.当該学校等の全校児童・職員の検査を実施すること。
2.同学校の学童保育等関連施設の職員の検査を実施すること。
3.感染が確認された家族の検査を実施すること。
4.同学校において、他の学校・施設に通う兄弟姉妹で感染が確認された場合、兄弟姉妹の通う学校・施設においても検査を実施すること。
5.学校等で検査を行うにあたっては、徹底した感染防止対策をとること。

なぜ学校で検査拡大などが必要なのか

学校においては、教職員や家族を含め、多数の学級・学年をまたいだ感染が十分に考えられます。
それは、「濃厚接触」でなくても同じです。多くの場合、マスク等をしていれば「濃厚接触」には当たらないとされますが、一般的なマスクは、一定の抑制効果はあるとしても、ウイルスを通さないわけではなく、お互いにマスクをしていても感染する可能性は低くありません。また、子ども同士の感染は少ないなどと言われてきましたが、変異株などはもちろん、従前の新型コロナウイルつについてもその根拠は乏しく、子どもであっても成人同様の対応をとることが妥当だと考えられます。

「濃厚接触」でないから、「学級が違うから」と検査をしないことにより、家族などを通じて、市内の他の学校や保育所・幼稚園等に感染が広がるおそれや、結果的に大規模な市中感染が生じるおそれもあります。

加えて、市内においても、検査をしないことで不安が高まり、例えば同校児童の兄弟姉妹が保育園等の登園自粛を要請されたり、塾等にも通えなかったりと、実質的に隔離的な状態が続いたという事例が発生しています。

前にも書いた通り、PCR検査の信頼性は非常に高いです。検査をすれば、感染しているかしていないか、かなり高い確率で判別することができます。また、感染力の有無の判断は極めて困難であるため、陽性であれば感染力があるという前提で、適切に隔離等の措置をとることが求められ、それは子どもでも大人でも大きく変わることはありません。ただ、適切な措置をできれば、それ以上の感染拡大を抑制することができます。また、陰性であれば、(もちろん偽陰性という可能性が10%程度あるとはいえ)それまで通りの生活を送ることができます。

適切な環境で検査をすれば、検査をすることによって感染が広がったり、何か人体に悪影響が生じることはあり得ません。
検査は、少なすぎるくらいなら、多すぎるくらいでいいものです。

検査をしなかったら…

以下の4コマは、非常に単純化していますが、こういうことが起こりえるのです。これは、マスクをしていても変わりません。
学校には、A君のような子が多くいると考えられます。Aくんをはじめから検査し、適切な措置が取られていれば、こうしたことが防げるのです。
もちろん、A君は悪くありません。検査をしない行政側が悪いのです。

憶測・詮索を防ぐための適切な情報開示

埼玉県で変異株のクラスターが見つかったと報道された時期と、桶川市内学校で多数の感染者が見つかったとの報道時期が重なったころで、変異株クラスターが桶川市内学校だという憶測が広がりました。これは、検査時期が異なっていたことから、当該変異株のクラスターと桶川市内学校の複数感染確認とは別事例であるということがわかっていますが、県からの情報があまりにも少ないために起きた憶測・詮索の結果です。

また、それとは別に、感染者が見つかり、休校となった学校において、保護者に対してさえ学年別の感染者数すら伝えられず、多くの不安な声が高まっていました。

個人情報・プライバシーの保護という観点から、個人を特定するような形での公表は確かに避けるべきです。しかしながら、あまりにも情報を開示しないことで、かえって憶測・詮索が広がったというのが事実でもあります。他都道府県や他市町村において、埼玉県以上に情報を公開しているところは少なくなく、また、そうしたところにおいてその情報がもとで何かトラブルが起きた、ということもありません。
個人情報やプライバシーの保護のためにも、また、コロナ感染者=悪という差別意識をなくすためにも、例えば保護者限定で、個人が特定されない範囲で情報を開示するなど臨機応変な対応が望まれます。